「実はあなたも債券に投資している」といわれたら驚くでしょうか?

いやいや株式にしか投資してないし。
そもそも投資すらしてないし。
という声が聞こえてきそうです。

ですが実態として、あなたを含めた大半の人が債券に投資しています

銀行預金や国民年金に、いくらかはお金を入れてますよね?
それらの資金運用先に国債が含まれるので、間接的に債券に投資してるというワケ。

債券の利回り次第で、預金金利や将来の年金受給額が変わります。
それ以外にも、債券には他のアセットには無い有用な特徴が多数。

  • 安定した利息収入を得られる
  • 価格変動が緩やかでポートフォリオが堅牢になる
  • 円建て債券は満期まで保有すれば元本保証

さらに債権と金利を理解すると、経済をもっと深く理解できます。
株式投資をしているのに株価だけを追っていませんか?
金利は株価にも影響を与える重要なファクターです。

この記事では、預金や年金など身近な生活と密接に関係する、債券と金利の関係についてわかりやすく解説します

債券と金利について基本的な知識があれば、株式市場を読む精度も上がります。

2022年4月、米国は利上げの真っただ中。
この利上げが終わるころには米国債券の買い時が来るカモ・・・?
今のうちに債券の知識を深めておくと、割安価格で買い付けられるかもしれませんよ。

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金利が上がると債券価格が下がる理由とは

金利が上がると債券価格が下がり、逆に金利が下がると債券価格が上がる。
このように金利と債券はシーソーの関係、などとよく言われます。

その理由について、わかりやすく説明します。

例えば1月と2月に以下の債券が発行されるとします。

  • 1月:価格100円、クーポン1%
  • 2月:価格100円、クーポン2%

※クーポンとは利率のこと。

債券のクーポンは金利に連動するので、金利が上がればクーポンも上がります。

価格が同じでクーポンに2倍の差があれば、誰だって2月に発行された債券が欲しいですよね。
1月発行の債券は売られ、2月発行の債券が買われる状態になります。

1月発行の債券を持ってる人は、何とか売り抜けて2月発行の債券に買い替えたい。
ではどうするか。
クーポンが変えられないなら、価格を下げればいいですよね。

金利が上がると、それ以前に発行された債券は不人気に・・・。
だから値段を下げることで取引を成立させます。

逆に金利が下がると、それ以前に発行された債券の方が魅力的に映ります。
なので債券価格が上昇するんです。

計算式から考える金利と債券価格の関係

金利と債券価格の関係は計算でも導き出せます。
金利(債券の利回り)を算出する式は以下の通り。

\[最終利回り=\frac{クーポン+(100-購入価格)÷満期までの期間}{購入価格}×100(%)\]

クーポン1%で満期まで10年の債券があったとして、購入価格が100円と90円のケースを比べてみましょう。

\[\frac{1+(100-100)÷10}{100}×100=1.0(%)\]
\[\frac{1+(100-90)÷10}{90}×100=2.2(%)\]

購入価格が安いほうが利回りが高い。
言い換えると金利が上がると債券価格が下がる、ということです。

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債券とは国や企業が資金調達する仕組み

債券とは資金調達の仕組みで、ざっくりと一言でいうと借金です。
※譲渡可能かどうかの違いはありますが。

そんな債券について以下の3点を解説します。

  • 債券に関連する専門用語
  • 債券の代表的な特徴
  • 債券と株式の違い

債券と借用書(借金)の違い

借金というと借用書を思い浮かべる方もいるかもしれません。
ですが借用書と債券にはひとつ大きな違いがあります。

その違いは満期を待たずに譲渡できるかどうか。
借用書は基本的に譲渡できませんが、債券は自由に売買できます。

債券に関連する専門用語

債券を理解するために必要最小限の専門用語をピックアップしました。

言葉の意味が分からないと、この先の解説がやたらと冗長になってしまいます。
本当に重要な7つの用語に絞ったので、まずはコチラをお読みください。

  • 額面金額
  • 償還期限
  • 残存期間
  • 表面利率(クーポン)
  • 最終利回り
  • 応募者利回り
  • 直接利回り

額面金額

債券の最低申込単位。
また償還期限を迎えたときに、受け取れる金額でもあります。

発行金額は額面金額100円当たりで表され、必ずしも額面金額と一致するとは限りません。

例えば額面金額10,000円、発行金額95円の債券があったとしたら。
一口9,500円から購入可能という意味です。

償還期限

債券が償還される日付。
購入者に対して額面金額が払い戻される日のことです。

以下に挙げる3つの言葉は、どれも償還期限と同じ意味合いで使われます。

  • 償還期日
  • 償還日
  • 満期日

残存期間

債券を購入した日付から償還期限までの期間

例えば償還期限2030年12月の債券を2022年4月に購入したら。
残存期間は8年9カ月になります。

表面利率(クーポン)

表面利率とは毎年支払われる利子の割合(年率)です。
クーポンと言われることもあります。

額面金額に表面利率を掛けて利子を求めます。
購入価格ではなく額面金額に掛けるのがポイント。

例えば額面金額10,000円、発行金額95円、クーポン1%の債券があったとしたら。
毎年支払われる利子は95円ではなく、100円となります。

最終利回り

発行済みの債券(既発債きはつさい)を購入して償還期限まで保有したときの利回り
保有年数分の表面利率と、購入価格と額面金額の差額で計算されます。

最終利回りの計算式

\[最終利回り=\frac{クーポン+(100-購入価格)÷満期までの期間}{購入価格}×100(%)\]

応募者利回り

新規発行される債券(新発債しんぱつさい)の最終利回りをとくに応募者利回りと言います。

直接利回り

表面利率だけで計算した利回りを直接利回りと言います。

最終利回りは表面利率と元本の値上がり益で計算されます。
この元本の値上がり益は償還期限まで債券を保有してやっと確定するものです。

長期保有ではなく短期的な売買を主眼に置いた指標になります。

直接利回りの計算式

\[直接利回り=\frac{クーポン}{購入価格}×100(%)\]

債券の代表的な特徴

そもそも債券とはどんなアセットなのか。
代表的な特徴を3つ解説します。

  • 償還期限まで保有すると額面金額で償還する
  • 途中売却可能
  • 定期的な利子収入(利付債のみ)

償還期限まで保有すると額面金額で償還する

債券とは国や企業の借金なので、最終的にはお金が返ってきます
※債務不履行に陥った場合を除く。

債券には償還期限、つまり返済期限が設けられています。
返済期限を迎えると額面金額が払い戻される仕組みです。

円建て債券は満期まで保有すれば元本保証されるので、無リスク資産に分類されます。

満期より前に途中売却可能

例えば『個人向け国債変動金利型10年満期』は、新発債の償還期限が10年後です。
何があっても10年間は換金出来ないとなると、資金拘束がきつ過ぎですよね。

より広く取引を促し素早く資金調達できるように、債券は償還期限を迎えなくても途中売却可能です。
この途中売却可能な性質を譲渡可能性と言います。

定期的な利子収入(利付き債のみ)

債券は設定されたクーポンに従って利子が支払われます。
銀行預金の利子と似たイメージです。

日本は長らくゼロ金利政策が進行中で、あまり旨味はありません。
しかし米国債券などは2%前後のクーポンが設定された債券もあり、インカムゲインを主眼に置いた投資で活用できます。

利子が支払われない割引債(ゼロクーポン債)

一方で利子が全く支払われない、割引債(ゼロクーポン債)と呼ばれる債券があります。

これは発行金額が安価に設定された債券です。
元本の値上がり益、つまりキャピタルゲインを主眼に置いています。

債券と株式の違い

次は債券と株式の比較です。

投資家にとって 身近な株式。
その株式と債券を比べて、債券の輪郭をよりハッキリさせましょう。

債券と株式の違い
債券 株式
1社あたり発行種類 複数銘柄 1銘柄
元本保証 (条件付きで)あり なし
価値を示す指標 利回り 価格
価格変動 小さい 大きい

1社あたり発行種類

債券は1社につき何十銘柄も発行されるのが通例です。
例としてトヨタの社債を見てみましょう。

トヨタファイナンス – 投資家・金融機関さま向け財務・IR情報

1年で3~4種類の新発債が発行されています。
償還日や期間が違うと全て別銘柄扱いなので、これだけの種類があるんです。

対して株式は基本的に1社1銘柄です。
※まれに議決権の有無で銘柄が分かれている場合もあります。

元本保証

債券は条件付きで元本保証(もっと正確にいえば額面金額保証)があります。
その条件は2つ。

  • 円建て債券であること(為替リスクなし)
  • 償還期限まで保有すること

この2つの条件を満たせば額面金額が払い戻されます。
なので円建て債券は無リスク資産に分類されます。

一方で株式に元本保証はありません
企業の業績によって価格が大きく変わりますし、元本の払い戻しもありません。

価値を示す指標

債券にとっつきにくくなる要素のひとつ。
基本的に債券は利回りの上下で価値を判断します。

最終利回りは表面利率と元本の値上がり益で値を求めましたよね。

債券の最終的なリターンは利回りに大きく左右されます。
なので利回りベースで語られるということ。

株式はというと、ご存じの通り価格で判断します。
1万円の株式が1万5千円に値上がりしたら50%の上昇。
わかりやすくていいですね。

価格変動

債券は株式ほど価格が動きません。
金利や発行母体の格付けに連動するので、短期的に変動しにくいからです。

また価格が動くときも個々の銘柄がバラバラに動くわけではありません。
多くの銘柄が一斉に、金利と反対方向に動くのが特徴です。

株式は企業業績や日々のニュースの影響を受けるため、短期的にも大きく価格が変動します。
また個々の銘柄でそれぞれバラバラに価格が上がったり下がったりするのが特徴です。

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代表的な債券の種類

債券の具体的な種類を解説するにあたって外せないのがこの2つ。

  • 個人向け国債
  • 米国国債ETF

個人投資家が投資対象とする債券はほぼこの2つです。

それ以外にも債券には数多くの種類があります。
それぞれの特徴を見ていきましょう。

  • 国債
  • 外債
  • 地方債
  • 特別債
  • 社債
  • 物価連動債

国債

個人向け国債の特徴
個人向け国債の特徴 引用元:財務省 – 個人向け国債

国が発行する債券。
単に国債というと日本国債を指すケースが大半です。

先ほど挙げた個人向け国債も日本国債です。

外債

国外機関が発行する債券をまとめて外債といいます。
海外の企業や国の債券が当てはまります。

投資対象としての有名所は米国債券ETFです。
格付けが高いものだけを扱ったETFや、逆に低いものだけを扱ったETFなど、いくつかの種類があります。

地方債

都道府県や市町村などの地方自治体が発行する債券のこと。
国債に比べて利率が高く流動性が低い特徴があります。

社債

民間会社が発行する債券を社債と言います。
各企業の信用度によってクーポンや発行価格がまちまちです。

信用度とは格付け会社が発表するレーティング。
JCRやS&Pが有名です。

例えばJRCであればAAAからDまでの11段階での格付けを行っています。

JCRの長期発行体格付 出典元:JCR
格付記号 定義
AAA 債務履行の確実性が最も高い。
AA 債務履行の確実性は非常に高い。
A 債務履行の確実性は高い。
BBB 債務履行の確実性は認められるが、上位等級に比べて、将来債務履行の確実性が低下する可能性がある。
BB 債務履行に当面問題はないが、将来まで確実であるとは言えない。
B 債務履行の確実性に乏しく、懸念される要素がある。
CCC 現在においても不安な要素があり、債務不履行に陥る危険性がある。
CC 債務不履行に陥る危険性が高い。
C 債務不履行に陥る危険性が極めて高い。
LD 一部の債務について約定どおりの債務履行を行っていないが、その他の債務については約定どおりの債務履行を行っているとJCRが判断している。
D 実質的にすべての金融債務が債務不履行に陥っているとJCRが判断している。

物価連動債

物価連動債、またの名をインフレ連動債と呼ばれることもあります。
消費者物価指数に連動して元本部分が変動する仕組みです。

基本的に債券はインフレに弱いアセットです。
物価連動債はその弱点を克服するために導入されました。

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ポートフォリオを安定させたければ債券は一考の余地あり

債券の特徴を簡単に振り返ってみましょう。

  • 金利が上がれば債券価格が下がる
  • 金利が下がれば債券価格が上がる
  • 償還期限まで保有すると額面金額で償還する
  • 満期より前に途中売却可能
  • 定期的な利子収入が得られる

世界中で長らくゼロ金利が続きました。
しかしここ最近ようやく流れが変わり始めました。

割安で債券を購入できれば、ポートフォリオはとても安定したものになります。
その理由は価格変動が小さく、安定したインカムゲインが得られるから。

米国の利上げと債券価格の推移は要チェックです。

もしも債券の買い場が訪れたとして、どれくらいの割合で資産に組み込めばいいのかわからない・・・。
そんな方に向けてアセットアロケーションについて解説した記事もあるので、ぜひ読んでみてください。