株式100%でインデックス投資を始めてみた。
けど思ったより資産価格が大きく動いてソワソワする・・・。
そんな不安に苛まれるなら、カウチポテト戦略は救世主になるかもしれません。
カウチポテトの語源は、カウチ(ソファ)に寝転がってポテチを食べながらでも続けられる。
それほどメンテナンスコストが低い、というところからきています。
軽い名前に見合わない長い歴史も備えています。
古くはベンジャミン・グレアムという投資界の巨匠がリスク資産と無リスク資産を半々でと書籍に書いています。
※ベンジャミン・グレアムは、あの世界有数の投資家ウォーレン・バフェットの師匠。
野球でいうところの長嶋茂雄、バスケでいうとマイケル・ジョーダン。
またスコット・バーンズが1991年にカウチポテトインベスティングストラテジーを立ち上げたことでも有名です。
※カウチポテトインベスティングストラテジーとはAssetBuilder社が提供する、カウチポテト戦略にのっとった投資顧問。
由緒ある歴史を備えたカウチポテトポートフォリオ。
この記事では以下のポイントを解説します。
- 運用方法
- リバランス方法
- メリット・デメリット
向き不向きでいうと。
なるべく時間をかけずに、心穏やかに投資したい人向け。
手間暇かけて、最高リターンを追求したい人には不向きです。
今のあなたの考えがどうであれ。
こういう運用もあると知って、ポートフォリオを見直すキッカケになれば幸いです。
カウチポテトポートフォリオとは
カウチポテトポートフォリオとは、リスク資産と無リスク資産を5:5で組み合わせたポートフォリオ。
運用にほとんど手間が掛からないのが特徴です。
リスク資産と無リスク資産の比率は半々で決まっているわけではありません。
おおよそ75%~25%の間で調整されることもあります
例えば株式75%債券25%だったり、逆に株式25%債券75%だったり。
つまり5:5の比率で、というのは具体例のひとつであって。
一番大事なのはメンテナンスの少ないポートフォリオを構築するための手法、ということです。
リスク資産は株式インデックスファンド1本で。
無リスク資産は、米国では債券インデックスファンド1本で構成されます。
※日本からドル建て債券を買うと為替リスクを負うので、無リスク資産とはいいにくいです。
なのでカウチポテトを実践するなら無リスク資産は現金がよいでしょう。
2本のインデックスファンドを最初に決めた比率で運用し続ける。
だからこそ片手間で維持できるシンプルなポートフォリオが出来上がるというワケ。
運用方法とバックテスト
ここからはカウチポテトポートフォリオの運用方法の解説です。
それに加えてなるべくリアルな条件のバックテストを実施。
その結果を深掘りして見ていきます。
※バックテストとは実際の過去データを使って、どんなパフォーマンスを発揮するかシミュレーションすること。
カウチポテトポートフォリオの運用方法はとても簡単3ステップ
運用方法といってもやることは3つだけ。
- リスク資産と無リスク資産の比率を決める
- インデックスファンドの積み立て設定
- それ以降は年に一度のリバランスのみ
次はリスク資産と無リスク資産のシミュレーションと、結果の解説に移ります。
リスク資産と無リスク資産の比率を変えてバックテストする
リスク資産と無リスク資産の比率を、以下の4パターンでバックテストします。
- 株式100%
- 株式75%・債券25%
- 株式50%・債券50%
- 株式25%・債券75%
条件はこの通り。
- 期間は2003年1月から2022年2月
- 毎月300ドル(35,700円)積み立て
- 年1回リバランス
- 株式はバンガード500インデックスファンド(VFINX)
- 債券はiシェアーズiBoxx米ドル建て投資適格社債ETF(LQD)
※金額がドルな理由は海外製のシミュレータを利用したからです。
銘柄も特にこれがオススメというわけではありません。


株式が多いほどリスクもリターンも高い。
債券が多いほどリスクもリターンも低い。
至極真っ当な結果になりました。
バックテストの結果を読み解くために、意識したいポイントが2つ。
- チャートの前半は団子状態で後半になるほど差が広がる
- 最大下げ幅とそこからの回復に要した期間
チャートの前半は団子状態で後半になるほど差が広がる
株式100% | 株式75% 債券25% |
株式50% 債券50% |
株式25% 債券75% |
|
---|---|---|---|---|
2012年年末時点 積み立て額 |
55,820ドル 約664万円 |
57,646ドル 約686万円 |
58,890ドル 約701万円 |
59,606ドル 約709万円 |
最終積み立て額 | 290,520ドル 約3,457万円 |
245,360ドル 約2,920万円 |
204,218ドル 約2,430万円 |
167,709ドル 約1,996万円 |
2012年年末時点の積み立て額を見てみましょう。
むしろ株式の割合が多いほど、額が少ないことがわかります。
次は最終積み立て額。
こちらは株式の割合が多いほど額が多いです。
最初の10年は運用成績がほぼ横ばい。
しかし後半10年で顕著な差が生まれました。
何がいいたいのかというと、複利効果を大きく受けるほど、リスク資産と無リスク資産の比率の影響が大きくなるということ。
逆にいえば投資初期はさほどリスク資産と無リスク資産の比率が影響しない、とも言い換えられます。
※複利効果とは運用益を再投資して、利益がさらなる利益を生み出す効果。
小さい雪玉を転がしても少しずつしか大きくならないけど、大きな雪玉は加速度的に大きくなる、こんなイメージです。
最大下げ幅と回復に要した期間
株式100% | 株式75% 債券25% |
株式50% 債券50% |
株式25% 債券75% |
|
---|---|---|---|---|
最終積み立て額 | 290,520ドル 約3,457万円 |
245,360ドル 約2,920万円 |
204,218ドル 約2,430万円 |
167,709ドル 約1,996万円 |
最高リターン (年率) |
32.18 | 27.84 | 24.35 | 20.86 |
最低リターン (年率) |
-37.02 | -27.17 | -17.31 | -7.46 |
最大下げ幅 (%) |
-50.97 | -40.60 | -29.43 | -18.85 |
最大下げ幅とは20年間のバックテストの中で、期間を区切らずに最も資産が下がった割合を指します。
最低リターン(年率)より最大下げ幅が大きい。
この数字が指し示す事実は、20年間投資していれば1年以上続く下げ相場に出くわす可能性があるということ。
最大下げ幅のもう少し詳しい内容を見ていきましょう。
- 株式100%
2007年11月から2009年2月にかけて50.97%下落して2012年8月に回復
1年3カ月の下げ相場を3年6カ月かけて回復 - 株式75%・債券25%
2007年11月から2009年2月にかけて40.60%下落して2011年2月に回復
1年3カ月の下げ相場を2年かけて回復 - 株式50%・債券50%
2007年11月から2009年2月にかけて29.43%下落して2010年4月に回復
1年3カ月の下げ相場を1年2カ月かけて回復 - 株式25%・債券75%
2007年11月から2008年10月にかけて18.85%下落して2009年9月に回復
11カ月の下げ相場を11カ月かけて回復

債券の比率が上がるほど、暴落からの回復が明らかに早くなっていますね。
その一方で最終的な積み立て額を比べると、株式100%と株式25%・債券75%は7割以上の差があります。
リスクとリターンのトレードオフをどう感じるか。
それによってリスク資産と無リスク資産のバランスが決まります。
結局どの割合にしておけばいいの?
という疑問への回答は、とりあえず50:50で様子見、です。
先ほどの繰り返しですが、投資初期はリスク資産と無リスク資産の比率の影響はさほどありません。
また50:50で始めておけば、その後の状況によってリスクを上げるのも下げるのも簡単です。
迷うなら50:50にしてみるのがオススメです。
年に1度のリバランスでリスクを調整する
運用方法でも軽く触れましたが、年に1度くらいのペースでリバランスする必要があります。
※リバランスとは株式と現金の比率を元に戻すこと。
運用を続けていると、主に株式の暴騰暴落により、株式と現金の比率がズレてきます。
最初は50:50の比率で始めたのに、株高でいつの間にか75:25になったとしたら。
それは当初より値動きの激しい落ち着かないポートフォリオになってしまったということ。
元の落ち着ける比率に戻すために株式を売って、比率を50:50に戻す。
これがリバランスです。
リバランスの具体例
リバランスの具体的なルールは2つ。
- 年に1回(月も決めておく)
- 比率が10%以上ズレたら株式を売買する
例えば毎年1月にリバランスすると決めたとして。
2007年1月に株式50:現金50だったのが。
2008年1月に55:45に変わっていたとします。
このケースでは比率のズレが10%以内なので何もしません。
2008年1月に株式55:現金45だった比率が。
2009年1月に35:65に変わっていたら。
株式の比率が50%になるまで買い増します。
2009年1月に株式50:現金50に戻した比率が。
2010年1月に60:40に変わっていたら。
今回は逆に株式の比率が50%になるまで売ります。
リバランスとは安く買って高く売る仕組み化

過去のチャートを見れば分かる通り。
2008~09年にかけてはリーマンショックでチャートが大きく下落しました。
リバランスの具体例なルールを思い出してみると・・・。
- 年に1回(月も決めておく)
- 比率が10%以上ズレたら株式を売買する
上記2つのルールを守る。
ただそれだけで安く買って高く売るを実践できていましたよね。
コロナショックのような短期間の下落を的確に掴むのは難しいです。
ですが長期間続くチャートの傾向は年に1度のリバランスで充分に拾えます。
2021年12月。
最も株高のタイミングで株式を売れた人は、果たしてどれだけいたでしょう。
ですがチャートを読めないとしても。
コロナショック明けの急激な株高を受けて、定期的にリバランスしている人はある程度の高値で株式を売ったはずです。
チャートを眺めるとどうしても欲望が湧き出くるものです。
もう少し上がるんじゃないかとか、逆にまだ下がり続けるんじゃないかとか。
相場をよもうとしないで機械的にリバランスする。
それだけで長期的なチャートの傾向を掴んで、安く買って高く売るを実践できるんです。
カウチポテトポートフォリオのメリットとデメリット
メリット |
|
---|---|
デメリット |
|
次はカウチポテトポートフォリオのメリットとデメリットを比較します。
簡単にまとめると。
投資初心者や心が擦り切れた人など、投資のことをアレコレ考えたくない人に向いていて。
YouTubeやブログで熱心に情報収集するような、手を加えて利益を最大化したい人には不向きです。
それぞれの項目について詳しく見ていきます。
【メリット1】手間が掛からない
カウチポテトのコンセプトそのもの。
実際にやってみると本当に手間が掛かりません。
やることといえば以下の3点。
- リスク資産と無リスク資産の比率を決める
- 一番最初にインデックスファンドの積み立て設定
- それ以降は年に一度のリバランスのみ
比率を決めて積み立て設定するのに1時間。
リバランスは年に1度30分。
10年運用しても投資にかける時間はたったの5時間30分。
投資は手段であって時間を割きたくない。
こんな価値観の人にピッタリです。
【メリット2】リスクを抑えて運用できる
基本的にリスク資産と無リスク資産を5:5で組み合わせるカウチポテト。
仮に暴落が来て株価が半額になったとしても。
株式100%と比べるとダメージも半分で済みます。
投資で一番やってはいけないのは、投資をやめること。
続けてさえいれば、いつかはまた株価が上がります。
2022年年初からのチャートの動きは、ここ2年ほどの右肩上がりとは明らかに違います。
株式100%でリスクを取ることだけが投資ではありません。
【デメリット1】やることが無さ過ぎて退屈
定期的にやることといえば、年1回のリバランスくらい。
ホントに驚くほどなーーーんにもやることがありません。
初心者にありがちなのが、もっと良い手法を求めて情報収集。
そして見聞きしたことを片っ端から試してしまうパターン。
カウチポテトポートフォリオはそもそも一夜で億り人に慣れるような戦略ではありません。
ゆっくりと長い時間をかけて資産を大きくしていく方法です。
投資は趣味として、時間をかけて試行錯誤したい。
そんな人には耐えきれないほど退屈です。
【デメリット2】リターンが低い
メリットでは暴落でダメージが半分という例を挙げました。
これは逆に、暴騰でも利益が半分ということを意味します。
2021年のような上昇相場の最中では、物足りなさを感じるかもしれません。
50%の無リスク資産は、暴落時の買い増し用の資金であり、また市場から脱落しないための精神安定剤である。
ココに価値を見出せないと、カウチポテトポートフォリオで運用を続けるのは難しいでしょう。
カウチポテトポートフォリオは投資に時間を割きたくない人に最適
カウチポテトポートフォリオについて簡単にまとめます。
- リスク資産と無リスク資産を50:50で組み合わせる
- メリットは手間が掛からないこと、年に1回30分のリバランスだけ
- デメリットはリターンが低いこと、上昇相場では物足りなさを感じる
そしてもう一度振り返ってほしいのが、リスク資産と無リスク資産の組み合わせごとの最大下げ幅。
株式100% | 株式75% 債券25% |
株式50% 債券50% |
株式25% 債券75% |
|
---|---|---|---|---|
最終積み立て額 | 290,520ドル 約3,457万円 |
245,360ドル 約2,920万円 |
204,218ドル 約2,430万円 |
167,709ドル 約1,996万円 |
最高リターン (年率) |
32.18 | 27.84 | 24.35 | 20.86 |
最低リターン (年率) |
-37.02 | -27.17 | -17.31 | -7.46 |
最大下げ幅 (%) |
-50.97 | -40.60 | -29.43 | -18.85 |
バックテストの結果なので、未来がこの通りになるわけではありません。
ですがひとつの参考事例にはなります。
株式の割合によって暴落時に何割くらい資産が吹き飛ぶのか。
長く投資を続けるために知っておいて損はありません。
これを機にアセットアロケーションについて深堀したい!
という人は以下の記事も併せて読んでみてください。
記事執筆にあたり、参考にさせていただいたサイトの一覧。