投資信託(Mutual Fund)とETF(Exchange Traded Fund:上場投資信託)。
どちらも多数の投資家からお金を集め、プロに運用してもらう仕組みです。
両者には制度面と運用面に大きな違いがあります。
- 制度面の違い
上場しているかどうか
投資信託は証券会社などの販売会社を通じて取引する
ETF(上場投資信託)は名前の通り上場しているので証券市場で取引する - 運用面の違い
分配金が自動で再投資されるかどうか
投資信託は分売金が自動で再投資されるので、ほっとくだけで長期投資できる
ETFは分配金を必ず受け取るので、再投資したければ都度、購入手続きが必要
この記事では投資信託とETFの違いを制度面・運用面、ふたつの側面から解説します。
制度面では7つのポイントに着目して違いを比較し、運用面では投資初心者に向けた使い分けのロールモデルをご紹介。
名前は知っているけど中身はよく知らない・・・、という人もこの記事を読めば大丈夫!
投資信託とETFの違いを理解して、あなたの投資方法に合わせて柔軟に活用できるようになります。
投資信託とETFの違い7選
投資信託 | ETF | |
---|---|---|
買う場所 | 販売会社 | 証券市場 |
価格変動 | 1日1回 | リアルタイム |
注文方法 | 口数指定/金額指定 | 指値/成行 |
購入コスト | 購入時手数料 | 売買手数料 |
保有コスト | 信託報酬 | 信託報酬 |
売却コスト | 信託財産留保額 | 売買手数料 |
分配金 | 再投資するか選べる | 必ず受け取る |
投資信託とETFの違いを表にまとめました。
なんとなく差があるんだなと感じてもらえたらOKです。
知らない単語が多くてよくわからない・・・、と思っても安心してください!
誰にでもわかるように、ひとつずつ丁寧に解説します。
買う場所~販売会社か証券市場か
販売会社(証券会社・銀行など)を通じて購入
証券口座を通じて証券市場で購入
投資信託は販売会社で取り扱っている銘柄だけ購入できます。
目当ての商品があれば、販売会社で取り扱っているか事前に調べましょう。
取引単位には口を使います。
※例:投資信託を1口購入する
ETFは証券口座を通じて証券市場で購入します。
どの証券会社で口座を開いても全てのETFが購入可能です。
こちらも取引単位には口を使います。
※例:ETFを1口購入する
価格変動~1日1回かリアルタイムか
取引結果から1日1回、基準価額が計算される
需給の変動でリアルタイムに価額が変わる
投資信託の基準価額は、1日1回、証券市場が閉じた後に、以下の式で計算します。
- 純資産総額/総口数=基準価額(1口あたり価額)
注文後に基準価額が決まるので、注文時点で価額はわかりません。
注文の翌日以降に基準価額が決まる、と覚えておきましょう。
ETFは株式と同じく、需要と供給によってリアルタイムに価額が変わります。
投資信託と違い、注文時点で価額が分かるんです。
注文方法~口数指定/金額指定か指値/成行か
口数指定/金額指定のどちらかを指定
指値/成行のどちらかを指定
投資信託は注文時点で価額がわからないので、口数か金額を指定して注文します。
注文日の基準価額を10,000円として、口数指定と金額指定を比べると以下のように。
- 口数指定で1口注文するパターン
10,000円を支払って1口購入
- 金額指定で5,000円注文するパターン
5,000円を支払って0.5口購入
※投資信託は1口より小さい口数でも保有できます。
なので100円からの小額投資が可能です。
ETFはリアルタイムに価額が見えるので、株式と同じように指値か成行のどちらかを指定します。
- 指値とは
取引額と口数を指定する注文方法
メリット:任意の価額で取引できる
デメリット:(基準価額と大幅にずれた指定だと特に)取引が成立しないことがある - 成行とは
取引額を決めず口数だけ指定する注文方法
メリット:(指値より優先的に)必ず取引が成立する
デメリット:基準価額から大きく離れた価額で取引してしまうことがある
※ETFの最小取引単位は1口です。安くてもおよそ10,000円から。
投資信託のように100円から購入はできません。
購入コスト~購入時手数料か売買手数料か
ファンドごとに異なる購入時手数料
証券会社ごとに異なる売買手数料
投資信託を購入するには、ファンドごとに決まった購入時手数料を支払います。
購入額に対して一定の割合が、購入時手数料として掛かります。
商品によって、0%だったり、3~5%もの購入時手数料を引かれることも。
※投資信託の期待リターンを低く見積もると年率4%ほど。
3~5%もの購入時手数料を支払うと、1年目のリターンがまるごと手数料に消えてしまいます。
ETFは証券会社ごとに異なる売買手数料がかかります。
一例として楽天証券の売買手数料を見てみると・・・。
約定代金(取引金額) | 手数料 |
---|---|
2.22米ドル以下 | 0円 |
2.22米ドル超~4,444.45米ドル未満 | 約定代金の0.495%(税込) |
4,444.45米ドル以上 | 22米ドル(税込) |
楽天証券では以下のように取引すると、手数料がお得になりますね。
- 売買回数を少なくする
- 一度の取引量を多くする
サービスの一環で、下記銘柄は買付手数料無料です。
- バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)
- バンガード・S&P 500 ETF(VOO)
- バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)
- SPDR S&P 500 ETF(SPY)
- SPDR ダウ・ジョーンズ REIT ETF(RWR)
- SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
- グローバルX AIビッグデータ ETF(AIQ)
- グローバルX フィンテックETF(FINX)
- グローバルX ゲノム&バイオテクノロジーETF(GNOM)
保有コスト~どちらも信託報酬
信託報酬(ちょっと高め)
信託報酬(ちょっと安め)
投資信託・ETFともに保有するだけで信託報酬というコストがかかります。
どちらも同じ名前ですが、投資信託のほうが少しだけ高く、ETFのほうが少しだけ安い傾向があります。
例としてS&P500に連動する投資信託とETFの信託報酬を比べてみましょう。
- 投資信託:SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
信託報酬0.09%
- ETF:バンガード・S&P 500 ETF
信託報酬0.03%
どちらもとても安いですが、ETFの方がより安いですね。
信託報酬に差があるのは、販売会社の有無によります。
投資信託は販売会社を通じて売買されるので、販売会社の取り分だけ信託報酬が高く。
ETFは証券市場で取引するので、販売会社を仲介しないぶん信託報酬が安くなります。
売却コスト~信託財産留保額か売買手数料か
ファンドごとに異なる信託財産留保額
証券会社ごとに異なる売買手数料
売却コストは購入コストと似たような仕組みです。
投資信託はファンドごとに異なる信託財産留保額がかかります。
商品によって0%~0.3%程度で設定されていることが多いですね。
ETFは購入コストと同じく、証券会社ごとに異なる売買手数料がかかります。
楽天証券では、購入時と同じルールで売却時にも手数料を引かれます。
分配金~再投資するか受け取るか
再投資するか選べる
必ず受け取る
投資信託は分配金を自動再投資するか受け取るか選べます。
※選べるものの実態は、自動再投資するファンドが多いです。
再投資しても受け取っても、分配金に対して20%ほど税金がかかるのは同じ。
※正確には20.315%。0.315%は東日本大震災復興支援のための、期間限定の税金。
ですが自動再投資すると購入時手数料を払わずに購入できるので、投資効率が上がります。
ETFでは分配金を必ず受け取ります。
配当や利息から経費を差し引いた全額を払い戻すと、法律で決まっているからです。
ETFの分配金を再投資したければ、改めて購入しなければいけません。
投資信託とETFの共通点3選
投資信託とETFの制度面の大きな違いを7つ解説しました。
しかし大元は、上場しているかどうかの差しかない両者。
共通点もいくつかあります。
ここでは投資信託とETFの共通点を3つ解説します。
- 法律で資産が厳重に守られる
- 手間をかけずに分散できる
- 投資の専門知識があまり必要ない
法律で資産が厳重に守られる
資産は運用会社ではなく信託銀行が管理するよう法律で定められています。
運用と管理が別組織なので、不正が起きにくい構造です。
加えて信託銀行では銀行の資産と投資信託・ETFの資産を分けて管理するよう義務付けられていて、2重に資産が守られています。
手間をかけずに分散できる
投資信託・ETFのどちらも、連動した指数に含まれる株式を全て買うのと、意味合いは同じです。
VTという名前のETFに投資すると、それだけで世界中の約9000の企業に投資できます。
そのうちの1社が倒産しても全体に及ぼす影響はたった0.01%!
分散投資はリスク低減にとても効果的です。
投資の専門知識があまり必要ない
投資信託とETFのどちらも、どの指数に連動する商品を買うのか選ぶだけ。
- 指数を決めて
- 手数料が低い商品を選ぶ
この2つの知識だけで市場平均を狙えるのが、投資信託とETFの強みです。
投資信託はインデックス投資にピッタリ
投資信託・ETFの違いと共通点をまとめました。
それぞれの性質、なんとなく伝わったでしょうか。
投資信託の特徴を簡単に振り返ると・・・。
- 1日1回、基準価額が決まる
- 注文時点では価額がわからない
- 分配金を自動で再投資できる
- 自動再投資により投資効率が高い
基準価額が後から決まるデメリットをメリットに変える
基準価額が後から分かるのはデメリットにも思えます。
ですが荒れた相場を考えてみると・・・。
今日の値動きを知ったうえで、明日以降に資産が増減する。
つまり精神的な負担を和らげてくれる時間があります。
とくに投資初心者は株式暴落時にろうばい売りしがちです。
そんなときも投資信託であれば、市場の動きと資産の動きにタイムラグがあるので、心の準備ができます。
自動再投資で手間をかけずにインデックス投資を実践
分配金の自動再投資は、短い期間ではほんの少しの差です。
ですが時間をかけて複利効果を生かすことで、とても大きく育ちます。
- 分配金を再投資する
- 再投資を仕組み化する
投資信託は仕組み化まで自動で実現できます。
なので初期設定以外はほぼ手間をかけずに、インデックス投資が実践できるんです。
ETFはスポット購入や高配当投資など柔軟性が高い
次はETFの特徴を簡単に振り返りましょう。
- リアルタイムに価額が変わる
- 取引時点で価額がわかる
- 分配金は必ず受け取る
- スポット購入や高配当投資などで柔軟な運用
アクセントになるETFをスポット購入する
ETFは指数に連動しますが、その対象は株式だけではありません。
金や原油などのコモディティを対象とするETFもあります。
ポートフォリオのリスク分散のために、株式以外の資産クラスが欲しくなったとき。
コモディティを対象とするETFが投資対象に挙がるかもしれません。
高配当株でキャッシュフローを改善できる
投資信託でのインデックス投資は長期投資向け。
15年以上先の未来に向けて、金のなる木に水をやり続けるイメージ。
実がなっても将来のために取っておく投資です。
ETFを使っての高配当投資は中期投資。
もう実が付いてる金のなる木を買って、少しずつ実を食べていくイメージ。
歳をとってから大金を持ってもしょうがない。
若いうちのお金の方が価値が高い!
という価値観なら、一度試してみても面白いかもしれません。
ただしスポット購入も高配当株も中級者以上向け
スポット購入も高配当株も、投資初心者向けではありません。
インデックス投資のように毎月定額を愚直に積み立てる投資ではないのです。
リアルタイムに価額がわかるメリットを生かして、割安な時にまとめて買うスタイルです。
まずは少額のインデックス投資から始めてみる。
リスク許容度の範囲内で少しずつ積み立て額を増やしてみる。
それでも退屈だと感じるなら。
その時はキチンと勉強したうえでETFに手を出してみると、投資信託とはまた違った投資を楽しめますよ。
投資信託をベースにETFを少し加えるのがオススメ
では最後に、投資初心者に向けて。
投資信託とETFの使い分けのロールモデルを紹介して締めくくりたいと思います。
結論は単純。
- 全世界株か米国株に連動する投資信託でインデックス投資
- インデックス投資に飽きてきたら、全世界株・米国株とは違うジャンルのETFをスポット購入
ETFではなく投資信託でインデックス投資する理由は2つ。
- 定額・定期買付できること
- 自動再投資できること
ETFでも決まった口数を定期購入できます。
ですが長期的にみると、定額で定期購入したほうがリスクが下がります。
※ドルコスト平均法により、価額が高いときは少なく、価額が低いときは多く買い付けられるため。
インデックス投資、確かに再現性高く資産を増やせる手段ではあります。
でも正直、やることなさ過ぎて飽きるんですよね。
ここで何か違うことしたいな、という欲が出てくるあなた。
あなたにはETFのスポット購入をオススメします。
間違っても、もっと勢いのあるインデックスファンドに乗り換えよう、などと思ってはいけません。
売買を繰り返すごとに手数料や、運用益があれば税金を引かれ、運用成績が下がるだけです。
なのでインデックス投資はずっと愚直に続ける。
暇つぶしに流行りのETFを調べてスポット購入する。
この流れがとてもオススメ。
インデックス投資はブレずに続けられるし。
たとえ1口でも、ETFを買うことで投資経験値が上がるし。
※ETFでも爆益!とは思わずに、勉強代として割り切ったほうがよいかもしれませんけどネ。
リスク許容度の範囲内で投資するという絶対のルールを守っている限り、いいことずくめですよ。
記事執筆にあたり、参考にさせていただいたサイトの一覧。
- 投資信託協会
- 楽天証券