投資結果の9割以上を左右するといわれるほど重要なアセットアロケーション。
例えば投資を始めたての人に多い、株式100%への投資。
これはかなりリスクが高いと知っていますか?
そんなの知らなかった……、という人も大丈夫!
理想的なアセットアロケーションの決め方をわかりやすく解説します。
アセットアロケーションを理解すれば、取れるリスクの範囲内でリターンを最適化できます。
- 株式・債券・オルタナティブの役割
- リスク資産と無リスク資産の切り分け方
- リスク資産の効率的なアロケーション
アセットアロケーションを決めるというのは、自分なりの投資スタイルを確立するということ。
どんな経済局面でもチャートに振り回されず、一貫した投資方針を継続できるようになります。
アセットアロケーションとは資産運用の設計書
アセットアロケーションの意味は、英語を直訳するとわかりやすいです。
- asset=資産
- allocation=割り当て
文字通り、資産をどのように割り振るのかという意味。
アセットアロケーションについて、以下の2点から話を始めましょう。
- アセットアロケーションとポートフォリオの違い
- アセットアロケーションの決め方
アセットアロケーションとポートフォリオの違い

アセットアロケーションとポートフォリオ。
図で見ればシンプルに違いがわかりますが、言葉にすると以下の通り。
- アセットアロケーション
資産全体における各資産クラスの内訳
- ポートフォリオ
投資した結果できあがる、具体的な銘柄の組み合わせ
つまりアセットアロケーションという名前の設計書をベースに、
銘柄を組み合わせた結果がポートフォリオです。
もっと詳しい内容を知りたい方は、以下の記事を読んでください。
【30秒でわかる】アセットアロケーションとポートフォリオの違い
アセットアロケーションの決め方
アセットアロケーションを決めるにはいくつかのステップがあります。
特に決まりはないですが、この記事では以下の順番で話を進めます。
- 各アセットの役割を理解する
各アセットには資産を増やす・守るなど役割があります
代表的なアセットの株式・債券・オルタナティブ、それぞれの役割を解説します - リスク資産と無リスク資産の割合を決める
まずは生活防衛資金を無リスク資産として切り分けます
投資するのは無リスク資産を切り分けた後の余剰資金で、というのが鉄則です - リスク資産をアロケーションする
不必要なリスクはとらず、リスクを取った分はリターンを追求する
効率的なアロケーションについて解説します
30秒でリスク許容度を簡単にチェック
本題に入る前に少しだけ寄り道。
この記事ではリスク許容度という言葉が何度も出てきます。
簡単に説明すると、投資元本が目減りしたときにどれくらい我慢できるか、という指標です。
ごく簡単な診断を用意したので、ぜひあなたのリスク許容度を測ってみてください。
その方が記事を面白く読めること間違いナシです。
リスク許容度診断
あなたのリスク許容度はどれくらい?
30秒で簡単チェック
リスク許容度についてもっと詳しく知りたい方はコチラの記事もオススメです。
別パターンの診断テストも用意しています。
あなたのリスク許容度はどれくらい?具体例を交えてわかりやすく解説
各アセットの役割
この記事では3つのアセットの組み合わせで、アロケーションを考えます。
それぞれのアセットに期待する役割を簡単に説明します。
- 株式
- 債券
- オルタナティブ
攻めの株式でリターンを高める
3つのアセットの中で最もリターンが高い株式。
この特性通り、株式に期待するのは高いリターンです。
長期的には右肩上がりに成長し続けています。
暗号資産やNFTなど目新しい投資先は次々と現れます。
ですが100年以上の歴史を持ち、右肩上がりの成長を続けるアセットは株式だけ。
間違いなく投資収益のコアとなる、重要なアセットです。
守りの債券でリスクを抑える
3つのアセットの中で最も値動きが小さい債券。
債券に期待するのは安定、つまりリスクの抑制です。
資産形成期にはあまり魅力的に映らないかもしれません。
ですが以下の状況では債券の強みを遺憾なく発揮してくれます。
- 資産が1,000万円を超えてリスクヘッジを考え始めたとき
- 退職を迎え金融資産を取り崩して生活するタイミングで
株式は成長性が高いものの、ボラティリティが高く安定しません。
債券は成長性は高くないですが、ボラティリティが低く資産の変動が緩やかになります。
※ボラティリティとは資産価格の変動の激しさを表す指標。
また安定したインカムゲインを得られるアセットでもあり、リスクヘッジにとても有効です。
債券の詳しい内容が気になる方は、以下の記事もオススメです。
実はあなたも投資してる!?債券と金利の関係をわかりやすく解説
オルタナティブでさらに分散させる
オルタナティブとは伝統的なペーパーアセット(上場株式・債券)の代替となる資産です。
上場株式や債券とは違った値動きをするものが多く、分散効果が期待できます。
オルタナティブの中でも投資対象としてなじみ深いのがゴールド。
基本的にはリスク資産全体の10%程度、アクセントに添えるくらいがオススメ。
オルタナティブの詳細は、以下の記事でも解説しています。
オルタナティブ投資の意味とは?伝統的資産との分散でポートフォリオを安定させる
リスク資産と無リスク資産の割合を決める
チャートに怯えず腰を据えて投資を続けるたったひとつの秘訣。
それは背伸びしないこと。
無理のない投資は、余剰資金でやるのが鉄則です。
まずは総資産を把握して、次に生活防衛資金を差し引く。
残りの余剰資金の範囲内で投資すれば、リスク許容度を大きく超える心配は少なくなります。
最初に生活を成り立たせるための無リスク資産(現預金)を分けておく。
これがアセットアロケーションの第一歩です。
総資産を把握する
あなたの総資産はいくらですか?
この質問に即答できれば問題ナシ。
次の項目に進みましょう。
答えられなかったら、まず総資産を把握しましょう。
総資産の把握といってもやることはカンタン。
2ステップでおおよその額がわかります。
- 家計簿アプリをインストールする
オススメはマネーフォワードME
- 口座連携する
普段使う銀行口座やクレジットカードを連携して明細を自動取り込み
手持ちの銀行口座と証券口座を全て連携する。
それだけで総資産が視覚的に把握できます。
金融資産管理にとても便利なマネーフォワードME
2022年4月、マネーフォワードMEに投資する人なら誰でも欲しくなる新機能が追加されました。
それは評価額と取得価額を個別に表示する機能です。

株式は値上がり部分に課税されるので、評価額だけではいくら税金が掛かるかわかりません。
ですが新機能により取得価額も表示されるので、運用益や課税額が直感的に見て取れるようになりました。
さらにドル建て資産を日本円換算で表示することも可能です。
昨今の円安で資産額がどう変化したか気になる人にうってつけ。
アプリ自体は無料で使えるので、ぜひこの利便性を体験してみてください。
生活防衛資金と余剰資金を切り分ける
総資産が把握できたら次は生活防衛資金と余剰資金。
余剰資金とは総資産から生活防衛資金を差し引いたもの。
では生活防衛資金とは何でしょうか。
それは収入が断たれたときに生活を支えるためのお金です。
つまり生活防衛資金は、月々の生活費をベースに算出します。
月々の生活費は家計簿アプリに口座連携するだけでわかります。
次が本題の生活防衛資金。
収入が断たれたときに生活を支えるためのお金です。
考え方は以下の通り。
人によってかなり幅があるのですが・・・。
月々の生活費の3か月~2年分を生活防衛資金とするケースが多数。
雇用環境が安定しているほど少なく、不安定なほど多く確保するのが通例です。
とはいえ期間にこれだけ幅があると、どうすればいいのか判断できませんよね。
一例として、わたしの生活防衛資金と考え方を紹介します。
わたしの職業は一般的なサラリーマンで、生活防衛資金は生活費の1年分としています。
その根拠は、1年あれば転職して収入を安定させるまでの期間として十分だから。
今の仕事を辞めてから同水準の収入に戻すまでに必要な期間の生活費。
これがわたしの考える生活防衛資金です。
アセットの比率を決める
リスク資産のアロケーションは以下の2ステップで進めます。
- アセットの比率を決める
- 各アセットの内訳を決める
まずはひとつ目。
アセットの比率を決めていきます。
アセットの比率を決める方法は大きく分けて2つ。
それぞれ見ていきましょう。
- カウチポテト戦略
株式と現金の比率だけを調整する方法
- ハンドクラフト法
リスク資産を株式・債券・オルタナティブで割り振る方法
カウチポテト戦略
カウチポテト戦略とはカウチ(ソファ)で寝転がってポテチを食べながらでも続けられるほど簡単な投資手法。
もう少し具体的に説明すると株式:現金の比率を50:50で維持し続ける戦略です。
金融資産が1,000万円を超えるまでは、難しいことを考えずにカウチポテトで投資するのがオススメ。
なぜなら金融資産が少ない間は、損失を被っても人的資本で取り返せるから。
債券やオルタナティブでリスク分散するのは、金融資産がある程度大きくなってからでも遅くはありません。
カウチポテト戦略のメリットは運用に手間が掛からないこと。
年に1回30分のリバランスをやれば、後は文字通りソファに寝転がっているだけで大丈夫。
投資を始めたてで金融資産がまだ大きくない。
もしくは資産運用に時間をかけたくないという人には、カウチポテト戦略がオススメです。
詳細は以下の記事で解説しているので、投資に時間を割きたくない人はぜひ読んでください。
【カウチポテトポートフォリオ】バックテストによる投資結果の解説付き
ハンドクラフト法
ハンドクラフトとはアセットアロケーションを決める手法のひとつ。
詳しい解説は別記事に譲って、ここでは結論だけをお伝えします。
リスク許容度が高い・普通・低い、それぞれの人に向けたアセットアロケーションのパターンです。

リスク許容度が高いなら全部株式に投資すればいい、というワケではありません。
若干の債券を混ぜたほうが、リターンはほぼ変わらずリスクを下げることができます。

リターンを追求したパターンとシャープレシオを追求したパターンの間を取ったもの。
利益や投資効率に振り切れなければ、こういう組み合わせもアリ。

投資効率の最大化を目指すパターン。
債券7割というとかなり保守的に見えますが、シャープレシオを重視するとこんな組み合わせになります。
各アセットの内訳を決める
アセットの比率の次に考えること。
それはアセットごとの内訳です。
アセットの内訳を決める2つの方法を解説します。
- 時価総額加重方式
- ハンドクラフト法
時価総額加重方式
インデックス投信によく採用される時価総額加重。
構成内訳を時価総額に比例させる手法です。
アセットの内訳を時価総額加重にするなら話はとても簡単です。
時価総額加重方式のインデックスファンドを1本選ぶ。
たったこれだけ。
時価総額加重方式を取ると、どうしても米国への比重が高まります。
この米国に偏ったポートフォリオが不安なら、次に紹介するハンドクラフト法がオススメです。
ハンドクラフト法
アセットの比率決めでも出てきたハンドクラフト法。
詳しい手法は別記事で解説するとして、また結論だけをお見せします。
時価総額加重だと過半数が米国に投資されます。
その偏りを補正してもっと効率的な分散投資をしたければハンドクラフト法を試してみてください。

※エクスポージャーとはリスクの度合い。
今回のケースでは投資割合を指す。
時価総額加重方式のインデックスファンド1本だと、約6割が米国への投資となります。
その割合を下げるために、以下のファンドを組み合わせるのが一番シンプルなパターンです。
- 米国
- 先進国(米国のぞく)
- 新興国

先進国の中身にこだわりたい人に向けたポートフォリオ。
ひとつ前のポートフォリオの『米国+先進国(米国のぞく)』の部分を、さらに分散させたものです。
まず北米・アジア・欧州の3つの地域に分けます。
その中で特に比率が大きな国を切り出して投資割合を制限する形です。
具体的には北米における米国と、アジアにおける日本。
北米には2カ国しかないので、米国とカナダ。
アジアは日本を切り分けて、日本+日本以外のアジア。
欧州は突出した国がないので、まとめて1本のファンドとしています。
ハンドクラフト法はこのようにトップダウンのアプローチで、どんどん細かくポートフォリオを分散させていく手法です。
リスクコントロールのためのリアロケーション
リスク許容度の変化などによりアセットの比率を見直す。
これをリアロケーションといいます。
似たような言葉にリバランスがあります。
こちらはポートフォリオの比率がずれてきたときに修正する、という意味合いです。
ここからはリアロケーションについて以下の2点を解説します。
- なぜリアロケーションが必要なのか
- 世代ごとのリアロケーションの具体例
なぜリアロケーションが必要なのか
リアロケーションする理由。
それはリスク許容度の変化などにより、アセットアロケーションを見直すためです。
例えば独身時代からずっと投資による資産形成をしていたとして。
結婚を機にパートナーへ投資の理解を得ようとして、一時的にボラティリティを下げるとしたら。
※ボラティリティとは資産価格の変動の激しさを表す指標。
一般的に株式はボラティリティが高く、債券はボラティリティが低い。
逆に子供が独立して子育ての費用がゼロになり、リスク許容度が上がるケースもあるでしょう。
もっとわかりやすい例を挙げるなら、退職により定期的な収入が途絶えたら。
否応なくリスク許容度が下がります。
この通りライフイベントによって、リスク許容度は大きく変わるものです。
一度決めたらそれで終わり、ではなく。
アセットアロケーションは都度見直す必要があります。
リバランスのやり方とは?最小限のコストでバランスを保つ方法教えます
世代ごとのリアロケーションの具体例
基本的には歳を取るごとに、アセットアロケーションのリスクを下げて保守的にすべきです。
その理由は2つ。
- 年齢を重ねるごとに人的資本が減って金融資産が大きくなるから
- 同じ割合の下落でも金融資産が多いほど損失額が大きくなるから
話をシンプルにするため、以下の前提でリアロケーションの具体例を提示します。
- 30代:金融資産500万円ほど
- 40代:金融資産1,000万円ほど
- 50代:金融資産2,000万円ほど

株式100%で構成。

株式75%・債券25%で構成。

株式45%・債券45%・ゴールド10%で構成。
より詳しい内容は以下の記事で解説しています。
【30代・40代・50代】世代に応じたアセットアロケーションの変化
プロに任せるのも選択肢のひとつ
アセットアロケーションを全部自分で組み上げる、というのも選択肢です。
それと同様にプロに任せる、というのも選択肢です。
餅は餅屋。
多少のコストを支払えば、全てプロにお任せできます。
アセットアロケーションはよくわからない・・・。
お金で時間を買って、もっと有意義に過ごしたい!
という方にオススメのサービスを2つ紹介します。
- ターゲットイヤー型ファンド
- ロボアドバイザー
ターゲットイヤー型ファンド
ターゲットイヤーを決めると、自動でリスクを下げながら運用してくれるファンド。
最初は株式の比率が高く、徐々に債券の比率が上がっていくイメージです。
ターゲットイヤーを決めてしまえば後は自動的にリアロケーションしてくれます。
アセットアロケーションを自分で考える時間がもったいないと思ったら。
ターゲットイヤー型ファンドがいい仕事をしてくれるでしょう。
ロボアドバイザー
こちらは口座にお金を入れるだけで、全自動で資産運用してくれるサービス。
顧客満足度No.1のウェルスナビが有名です。
ウェルスナビが選ばれる理由は3つ。
- 運用者数No.1
- 一般NISAに対応
- 不正送金の防止
勉強することが多すぎて投資に踏み切れない・・・。
そんな人にとっては手数料1%を補って余りあるメリットがあります。
ウェルスナビの詳細は以下の記事からどうぞ。
ウェルスナビはやめたほうがいい?【結論:投資未経験ならオススメ】
情報過多で身動きが取れない投資未経験者必見!世界の富裕層が実践する「長期・積立・分散」投資が知識ゼロでも実践できるウェルスナビを紹介します。
リスク許容度に応じて投資を長く続けられるアセットアロケーションを作ろう
アセットアロケーションの作り方を簡単に振り返ります。
- リスク資産と無リスク資産を分ける
投資は余剰資金で
- リスク許容度に応じて株式と債券の比率を決める
株式100%はかなり高リスク、必要に応じて債券を混ぜる
あとはお好みでオルタナティブをトッピング - 各アセット内の構成を決める
お手軽派は時価総額加重、こだわり派はハンドクラフト
- ライフイベントやお金の価値観に沿ってリアロケーションする
リスク許容度の変化に合わせてアセットアロケーションも変えていく
一説によると投資が成功するのは、以下に挙げる特徴に当てはまる人だそうで・・・。
- すでに亡くなった人
- 投資に興味がない人
つまり統計的には頻繁に手を加えるより、ほっとく方が勝率が高いということ。
ではどうすればチャートに振り回されず、どっしりと構えられるのか。
その秘訣はリスク許容度の範囲内で投資することです。
投資を長く続けて利益を得るために必要なのは、等身大のアセットアロケーション。
何をいつ買うか、それよりどう分配するか。
後者の方が重要です。
リスク許容度の範囲内でリスクとリターンをを最適化するため。
ぜひあなた専用のアセットアロケーションを組み上げてください。