リバランスとは、ズレてしまったポートフォリオの比率を元に戻すこと。
年に1回ポートフォリオを見直しましょう、といわれるアレです。

アセットアロケーションも大事ですが、リバランスも同じくらい重要です。

株式と現金の比率が5:5のポートフォリオを例にしましょう。
よく見聞きするリバランスは、以下の様なものではないですか?

  • 株式が値上がりして比率が6:4になったら株式を売る
  • 株式が値下がりして比率が4:6になったら株式を買い増す

これも正解ですが、この記事ではもっと踏み込んだ解説をします。

ノートレードゾーンと最小トレードサイズ。
この2つを用いてリバランスの頻度と手数料の影響を最小化する方法です。

リバランスが大事といっても、神経質にトレードを繰り返して手数料がかさんでしまっては本末転倒。
そうならないためのスマートなリバランスを、わかりやすく解説します。

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過去の事例に当てはめてリバランスの具体例を解説

米国株・先進国株・新興国株・米国債券の4つのアセットで構成されたポートフォリオ
VTI:米国株式、VEA:先進国株式、VWO:新興国株式、BND:米国債券、4つのアセットで構成したポートフォリオ

まずはリバランスの具体例から見ていきます。
下記3つのシナリオに当てはめて、サンプルポートフォリオをリバランスしてみましょう。

  • コロナショックの株価下落
  • コロナショック後の株価回復
  • 2022年以降の利上げ相場

リバランスには以下の基準を設け、2つの基準をどちらも満たしたときだけ実施します。

  • ノートレードゾーン:±3%

    どれくらい比率が変化したらリバランスするかの基準

  • 最小トレードサイズ:50ドル

    どれくらいの額トレードが必要になったらリバランスするかの基準

    コロナショックの株価下落

    コロナショック時のポートフォリオの変化
    コロナショック時のポートフォリオの変化。株式が値下がりして相対的に債券の比率が上がった。

    まだ記憶に新しいコロナショック。
    2020年の年初から3月までの短い期間で株価が2割ほど下がりました。
    逆に債券価格はほぼ横ばいだった特徴があります。

    ポートフォリオに含まれる4銘柄の価格推移は以下の通り。

    コロナショック時の各銘柄の価格推移
    2020年1月 2020年3月
    VTI 163ドル 128ドル
    VEA 42ドル 33ドル
    VWO 42ドル 33ドル
    BND 85ドル 85ドル

    株価が下落したので相対的に債券の比率が上がりました。
    BNDのノートレードゾーンが22±3%(25~19)なのでリバランス対象です。

    BNDを2つ売ると比率が25%に収まります。
    トレードサイズも170ドルで最小トレードサイズを超えるので、リバランスを実施します。

    コロナショック後の株価回復

    コロナショック後のポートフォリオの変化
    コロナショック後のポートフォリオの変化。株価が大幅に上がり相対的に債券の比率が低下した。

    コロナショック後に大規模な金融緩和が始まった時期。
    各国政府の下支えを受けて株価は大幅に上昇しました。
    ここでも債券価格はほぼ横ばいでしたね。

    ポートフォリオに含まれる4銘柄の価格推移は以下の通り。

    コロナショック後の各銘柄の価格推移
    2020年3月 2021年12月
    VTI 128ドル 240ドル
    VEA 33ドル 51ドル
    VWO 33ドル 49ドル
    BND 85ドル 84ドル

    今回は株価が大幅に上がり、相対的に債券の比率が下がりました。
    ノートレードゾーンを確認すると、VTIとBNDが閾値を超えています。

    • VTI:15±3(18~12)

      →18.5%なので0.5%オーバー

    • BND:22±3%(25~19)

      →17%なので2%アンダー

    VTIを売ってBNDを買うのもアリです。
    ですがBNDを3つ買い増しするとVTIもほぼ18%になるので、今回はBNDの買い増しのみとします。

    2022年以降の利上げ相場

    2022年の利上げ相場でのポートフォリオの変化
    2022年の利上げ相場でのポートフォリオの変化。株式・債券ともに価格が下がり、比率はほぼ横ばい。

    加熱した経済を引き締めるため政策金利上昇が決まった2022年。
    今まで上がり続けた株価は下落し、弱気相場入り。
    政策金利の上昇にともない、同時に債券価格も崩れています。

    ポートフォリオに含まれる4銘柄の価格推移は以下の通り。

    2022年利上げ相場の各銘柄の価格推移
    2021年12月 2022年6月
    VTI 240ドル 188ドル
    VEA 51ドル 40ドル
    VWO 49ドル 41ドル
    BND 84ドル 75ドル

    株式と債券が同時に値下がりしているため、ポートフォリオの比率はノートレードゾーンの範囲内です。
    なので今回はリバランス不要となります。

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    リバランスするときに注目すべき3つのポイント

    2020年から2022年にかけての相場は、かなり動きが激しいと感じたのではないでしょうか。

    リバランスの具体例では説明のためにわざとノートレードゾーンを小さく設定していました。
    ですが本来のノートレードゾーンを設定すると、リバランスは0回です。

    これだけ相場が動いても、ポートフォリオによってはリバランスは不要ということ。

    ここからはリバランスするときに注目すべき3つのポイントを解説します。

    • ノートレードゾーンと最小トレードサイズ
    • 投資目的の再確認とリアロケーション
    • 同じ指数に連動するよりよい金融商品の確認

      【ポイント1】ノートレードゾーンと最小トレードサイズ

      ノートレードゾーンと最小トレードサイズ。
      どちらも見慣れない言葉ですよね。

      まずはこの2つの言葉の意味を丁寧に説明します。

      ノートレードゾーン

      リバランスしない範囲のこと。
      ノートレードゾーンを超えるほど比率がブレたときにリバランスします。

      ノートレードゾーンを決める式は以下の通り。

      \[ノートレードゾーン=\frac{100}{ポートフォリオに含まれる銘柄数×2}(\%)\]

      リバランスの具体例で挙げたサンプルポートフォリオは、4つの銘柄で構成されていました。
      なのでノートレードゾーンは12.5%。
      正確には±6.25%となります。
      ※±6.25%にするとリバランスなしになるので、具体例では±3で解説しました。

      ノートレードゾーンを決めるメリットははリバランスの頻度を減らせること。

      ポートフォリオのバランスを保つのは重要です。
      しかしリバランスの頻度が多すぎると売買手数料などで資産が目減りしてしまいます。

      これを防ぐためにノートレードゾーンを決めて、ポートフォリオの比率とリバランス回数の均衡をとるのが重要です。

      最小トレードサイズ

      リバランスで資産を売買するときの最小単位。
      リバランスは以下2つの条件を両方満たしたときに実施します。

      • ノートレードゾーンを超えて比率が変化すること
      • 必要なトレード量が最小トレードサイズを超えること

      最小トレードサイズを決めるのは、手数料の影響を最小化するためです。
      なので最小トレードサイズの決め方は、売買手数料に依存します。

      1. 固定値の手数料がかかる場合、手数料の100倍。
      2. 固定値の手数料がかからなければ、ポートフォリオサイズの0.5%。

      最小トレードサイズは上記2パターンの、どちらか大きいほうの値を採用します。

      ノートレードゾーンだけだとリバランスの頻度はコントロールできますが、手数料の影響は受けてしまいます
      なので最小トレードサイズを設定して、リバランスの頻度と手数料の双方をコントロールすることで、スマートなリバランスが実現できます。

      2種類の手数料について

      手数料には定率と定額の2種類があります。
      定率なら気にする必要はないですが、定額の手数料は要注意

      その理由は定額の手数料は取引額が大きくなるほど相対的に安くなるから。

      1回の売買で固定値100円の手数料がかかるとしたら。
      1000円の取引を行えば10%の手数料ですが、10万円の取引であれば0.1%です。

      なるべくトレード量を増やした方が固定値の手数料の影響を小さくできます。
      なので最小トレードサイズの基準のひとつは「固定値手数料の100倍」となっています。

      リバランスの目的はポートフォリオの比率を保つこと。
      ですがあまりに厳格に運用すると、少額のトレードを何度も繰り返して、手数料で資産を目減りさせてしまいます。

      これを防ぐのがノートレードゾーンと最小トレードサイズ。
      両方の条件を満たしたときだけリバランスすることで、コストを最小化できます。

      先ほどのリバランスの具体例を思い出してください。
      コロナ前後の相場の最中でも、リバランスは2回、債券を少量売り買いしただけです。
      ※正式なノートレードゾーンを設定すればリバランスなし。

      実際のリバランスは相場が極端な動きをしない限り、そう多くはありません。

      巷ではよく年1回リバランスといわれてますよね。
      経験則としてこれぐらいの頻度が丁度いいと感じています。

      定期的なタイミングで年1回、ノートレードゾーンと最小トレードサイズを用いてポートフォリオのバランスを確認する。
      これがリバランスで重視すべきひとつめのポイントです。

      【ポイント2】投資目的の再確認とリアロケーション

      ポイント1でリバランスの具体的な考え方は伝わったと思います。
      でもせっかくポートフォリオを見直すなら、同時に確認したいことがあと2つあります。

      ポイントの2つ目は投資目的の再確認とリアロケーションです。

      ライフステージが変われば価値観も変わり、価値観が変われば投資目的も変わるのが自然です。
      例えば教育資金目的で始めた投資が、老後資金目的に変わっていくように。

      こういったケースでは、根本的なアセットの比率を見直す必要があります。
      目的地が変われば、それに合わせて最適な手段を取るべきです。

      このようにリバランスのタイミングで、そもそも投資目的に変化がないか。
      もし目的が変わっていたら、今のアセットの比率が最適なのか。

      アセットの比率そのものを変えることをリアロケーションといいます。
      このリアロケーションの観点でもポートフォリオを見直しましょう。

      【ポイント3】同じ指数に連動するよりよい金融商品の確認

      最後3つめのポイントは、同じ指数に連動するよりよい金融商品を確認することです。

      ことインデックス投資において、同じ指数に連動する金融商品なら、信託報酬が安いほうが優秀です。
      同じ結果が出るなら手数料が安いほうが、最終的な取り分は多くなりますよね。

      ポートフォリオに含まれている銘柄を見渡して、より優秀な銘柄が発売されていないか。
      もしくはあなたの投資目的によりマッチしたものがないか確認するのも重要です。

      S&P500に連動するインデックスファンドを例に挙げると。
      信託報酬が2%を超えるものから0.1%を切るものまで様々です。

      もしも信託報酬が高い商品を保持しているなら、信託報酬が安い商品に買い替えるだけで投資成績が上向くこともあります。

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      リバランスは一貫した投資方針を継続するための手段

      なぜリバランスなんて面倒なことをしないといけないのでしょうか。
      それは様々な理由でポートフォリオのバランスが崩れていくから。

      バランスが崩れるとリスク・リターンも変動して、当初思い描いてた投資とは違うものになってしまいます。
      リアロケーションしない限りは、ポートフォリオをメンテナンスして指針を守るのが大切です。

      インデックス投資を初めてから5年くらいは、積立金による資産変動が大きいです。
      なのでアセットアロケーションの効力を体感しにくいかもしれません。

      ですが6年目以降、徐々に積立金より株価の変動による資産の増減が大きくなります。
      遠い話のように思えるかもしれませんが、金融資産1,000万円を越えてくると積立金で資産はほぼ変わらず、株価変動が資産増減の主要な要因になります。

      この頃になって初めて、アセットアロケーションが投資成績の9割を決めるという言葉の意味を体感できる人も多いハズ。

      この時にリバランスの習慣が付いているかどうか。
      それが長期投資を継続できるかの分かれ目です。

      リバランス、つまりリスクコントロールの習慣があれば、リスク許容度の範囲内で淡々と投資できます。
      リバランスの習慣がないと、いつの間にかリスク許容度を越えて株式を保持して、暴落時の資産の目減りに耐えられなくなることも……。

      新しい習慣を身に付けるのはとても大変だし、目先の利益がないとなおさらですよね。
      でも10年後もコツコツと投資を続けているあなた自身のために、リバランスの習慣を身に付けておいて損はないですよ。

      参考サイト

      記事執筆にあたり、参考にさせていただいたサイトの一覧。