米国株と全世界株。
どちらがよいのでしょうか?
どちらがもうかるか、という観点で結論は出せません。
未来の株価がどうなるか、誰にも分からないので。
どちらがあなたと相性がよいか、という観点はシンプル。
この先も米国一強がずっと続くと確信を持てるか、これだけです。
- 米国一強が続くと思えば米国株
- 時代は移り変わるものと思えば全世界株
米国株か全世界株か。
とても悩ましい問題です。
それと同じくらい大事なのが、投資目的とリスク許容度。
この記事では、米国株派と全世界株派の主張を解説します。
その後に投資目的とリスク許容度から、銘柄選びよりも本質的な問題に触れます。
どちらの方がもうかるか。
そこに目を奪われている人に、ぜひ読んで欲しい内容です。
米国株派の主張
2010年代から現在にかけて絶好調の米国株。
なぜ米国株を選ぶのか。
米国株派の主張は以下の通り。
- 世界トップの経済大国だから
- 全世界株より米国株の方がリスクが低いから
- 全世界株より米国株の方が安全でコストが安いから
【主張1】世界トップの経済大国だから
世界トップの経済大国、米国。
経済規模も成長スピードもダントツです。
米国を米国たらしめる理由は3つ。
- 全世界でGDPトップ
- 主要先進国の中で人口増加率が最も高い
- 主要先進国の指数を比べてもダントツでトップ
それぞれ詳しく見てみましょう。
全世界でGDPトップ

IMFにデータがある1980年からずっと、米国が全世界でGDPトップです。
※IMFとは国際通貨基金(International Monetary Fund)のこと。
主要先進国の中で人口増加率が最も高い

主要先進国の国々は、人口増加が緩やか、もしくは減少傾向です。
その中で米国だけが、順調に人口を伸ばしています。
※G7とはGroup of Sevenの略。カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国で構成される。
主要先進国の指数を比べてもダントツでトップ

ここ50年のチャートです。
フランスやドイツ、日本がかすんで見えるほど、米国は圧倒的ですね。
【主張2】全世界株より米国株の方がリスクが低いから
投資では標準偏差でリスクを測ります。
実際はどうだったのか、比べてみましょう。
比較するのは、バンガード社のETF2本。
- 米国株ETF:VOO
連動する指数:S&P500
- 全世界株ETF:VT
連動する指数:FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス
理論的には分散したほうがリスクが下がるのですが・・・。
※ここでいうリスクとは、リターンの振れ幅のこと。リスクが下がるとチャートの動きが穏やかになる。
- VOO:13.55
- VT:14.16
過去10年の標準偏差を比べると、全世界株の方がリスクが高いという結果に。
ここ10年だけで見れば、米国株の方が安定していた、ということです。
【主張3】全世界株より米国株の方が安全でコストが安いから
全世界株は先進国や新興国を含む、50カ国程度で構成されています。
新興国の中には以下のようなカントリーリスクを孕んだ国々も。
※カントリーリスクとは、その国特有の事情で、企業の業績が悪くなるリスクのこと。
- 株主を保護する法整備が未熟
- 経済が不安定で会社が倒産しやすい
- 政治情勢が悪く市場に悪影響を与える
米国には新興国ほどのカントリーリスクはありません。
次は信託報酬を比較してみましょう。
- VOO:0.03%
- VT:0.08%
多くの銘柄を扱う全世界株より、銘柄数が少ない米国株の方が安いです。
※VTは約9,000銘柄、VOOは約500銘柄で構成される。
信託報酬でどれくらい差が出るのか、具体例を見てみましょう。
VOOとVTの年利をどちらも4%として、元本100万円を10年間保有したら・・・。
- VOO:1,475,980円
- VT:1,468,897円
その差はおよそ7,000円。
信託報酬には倍以上の差があるものの、どちらも十分に低いので、気にするほどではありません。
信託報酬を比べるために年利をどちらも4%としました。
しかし過去10年の実績は、VOO15.32%、VT10.44%と大きな開きがあります。
それを加味して、元本100万円を10年間保有したら・・・。
- VOO:4,159,550円
- VT:2,699,380円
なんとその差は約150万円!
全世界株は、米国株には無い危険性があり、コストも高い。
にもかかわらず、ここ10年のリターンは米国株以下。
となればもう、米国株しかありえない!
これが米国株派の主張です。
全世界株派の主張
次は全世界株派の主張です。
ここ10年、米国株が絶好調だったのは事実。
ではもっと長いスパンで考えるとどうでしょう。
全世界株派の主張は以下の通り。
- 米国一強が続くとは限らないから
- 米国経済も停滞するタイミングがくるから
- 自動的に最適なポートフォリオに修正されるから
【主張1】米国一強が続くとは限らないから

ひとつの国が栄え続けることはなく、いずれ時代は移り変わります。
ここ120年、米国一強の時期がかなり長いですが・・・。
1900年は英国に、1990年は日本に勢いがあったり。
経済には波があります。
そして米国の覇権に陰りが見えるシグナルが2つ。
- GDPが中国に抜かされそう
- 米国の人口増加率は低下
どんなデータが出ているのか、見ていきましょう。
GDPが中国に抜かされそう

米国が全世界でGDPトップなのは事実。
ですが今のペースだと近い将来、中国に抜かされそうですね。
米国の人口増加率は低下

主要先進国の中で、米国の人口と人口増加率はトップです。
ですが人口増加率は徐々に下がっています。
グラフからも右肩下がりになっているのがわかりますね。
【主張2】米国経済も停滞するタイミングがくるから

2000年代のITバブルからリーマンショックにかけて。
約13年間に渡って、米国株は完全に停滞していました。
BRICsの勢いに押され、投資家からも見限られて・・・。
※BRICsとは、Brazil・Russia・India・Chinaの頭文字を合わせた造語。
米国株といえど、常に成長し続けているわけではありません。
【主張3】自動的に最適なポートフォリオに修正されるから

全世界株は時価総額加重です。
つまり勢いのある国には多く、衰えてきた国には少なく投資する。
これが自動的に実現できます。
もし1900年に全世界株があれば、1/4は英国に投資されていました。
今は過半数が米国に投資されています。
そして将来、世界のパワーバランスがどう変わっても。
自動的に、最も市場規模が大きな国に、一番多く投資できます。
市場が完全にランダムウォークだとしたら。
どの国が成長するか考える必要すらない全世界株は、とても魅力的です。
※ランダムウォークとは、株価の値動きは予測不可能という考え方。
ここ10年の実績は米国株の圧勝、しかし株価は平均回帰する

ここ10年、米国株は圧倒的な成長を見せました。
しかし株価は平均回帰します。
暴騰・暴落はそう長く続きません。
S&P500の利回りを見てみると以下の通り。
- 1941年~2020年:約8%
- 2010年~2020年:約13%
ここ最近の成績が特別なのが、一目瞭然ですね。
長期視点では、約13%あった利回りが、8%前後に回帰していくでしょう。
かといって、全世界株の方が良い!というわけじゃありません。
どちらが正解という話ではなく、考え方の違いがあるだけです。
- 成長性が高い米国株でリターンを追求するか
- 保守的な全世界株で安定を求めるか
あなたはどちらが好みですか?
米国株派と全世界株派の主張を見てきました。
両者の主張を比べると、どうしても株価やリターンに目を奪われがちです。
本質的に投資で重要なのは以下の2つです。
- 投資目的に合った手段を選び
- リスク許容度の範囲内で投資する
銘柄選びは手段でしかありません。
上昇相場の誘惑に負けないように。
今一度、投資目的とリスク許容度を考えてみてはどうでしょうか。
目的に合った手段とリスク許容度の範囲内で投資しよう
人はなぜ長期投資に失敗して損するのでしょうか。
理由は簡単。
- ファンドをコロコロと乗り換えるから
- 暴落局面でろうばい売りするから
ではどうやって対策すればよいのでしょうか。
- 腰を据えてひとつのファンドを持ち続ける
米国一強がずっと続くと確信を持てれば米国株
少しでも不安があれば全世界株 - 投資目的に合った手段を選ぶ
目標金額が高く、少しでもリターンが欲しければ米国株
老後資金を保守的に運用したければ全世界株 - リスク許容度の範囲内で投資する
長期投資では必ず暴落局面に巻き込まれると考える
資産が半額になっても平常心を保てる範囲内で投資する
ここ最近は米国株が優秀でした。
ですがこの先どうなるかは誰にもわかりません。
米国株か全世界株か。
悩ましい問題の、判断基準はシンプルにひとつです。
この先も米国一強が続くのを信じられるかどうか。
- トータルで米国トップは揺らがない確信があれば米国株
- 少しでも不安要素があれば全世界株
あなたはどちらに将来性を感じますか?
記事執筆にあたり、参考にさせていただいたサイトの一覧。
- IMF – WORLD ECONOMIC OUTLOOK
- United Nations – Population Division
- TradingView
- CREDIT SUISSE