S&P Dow Jones Indicesが運営する世界的に有名な株価指数、それがS&P500

主な特徴は以下の3つ。

  • アメリカを代表する500企業で構成
  • アメリカ株式市場の時価総額の約80%をカバー
  • S&P500に連動する運用資産総額は日本の国家予算のおよそ5倍

コロナショック後の株価の伸びを受けて、とても人気が高い株価指数のひとつです。
しかし2000年からの約13年間、株価はほぼ横ばいでした。

S&P500の2000年代のチャート
2000年に高値掴みすると、株価回復まで約13年・・・。引用元:TradingView

株価は常に上がり続けるわけではありません。
短期的には上がり下がりを繰り返し、長期的には緩やかに成長します。

この記事では、S&P Dow Jones Indicesの公式情報(2021年6月末時点)をベースにS&P500の中身をわかりやすく解説します。

S&P500という指数の仕組みや、これまでのチャートの動きを知って、長期投資に生かしましょう。

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S&P500とは米国主要産業を代表する500銘柄により構成された株価指数

S&P500とは米国主要産業を代表する500銘柄により構成された株価指数

S&P500とは、アメリカの主要産業を代表する500企業により構成された株価指数です。

1923年に前身となる株式インデックスが開発され、当初は233銘柄が対象でした。
現在の500銘柄からなる形式になったのは1957年3月のことです。

今ではS&P500に連動する投資信託やETFの運用資産総額は4兆6千億ドルに。
その額は日本の国家予算のおよそ5倍!

アメリカ株式市場の時価総額の約80%をカバーしており、アメリカ大型株の動向を表す最良の単一尺度として広く認められています。

人気も実績も兼ね備えたS&P500。
特徴的なポイントをもう少し詳しく掘り下げていきましょう。

指数への追加基準

指数への追加基準
  • 米国企業
  • 時価総額が131億ドル以上
  • 浮動株比率が50%以上
  • 4四半期連続して黒字決算
  • ユニバース全体のセクター構成と等しい

基準の詳細は後ほど詳しく見ていきます。

要するにS&P500とは、株式の過半数が市場で流通している、アメリカの大企業が選ばれる指数です。

セクター比率は情報技術だけで1/4以上を占める

S&P500のセクター比率(2021年6月30日現在)
引用元:S&P Dow Jones Indices

S&P500のセクター比率、すなわち業種の内訳のグラフです。
情報技術だけで全体の1/4以上を占めています。

S&P500とアメリカ企業全体のセクター比率は同じです。
情報技術一強なのは、アメリカ企業全体としての特徴でもあります。

いま一番勢いがある業種にウェイトを置くことで、効率よく成長し続けているんですね。

情報技術一強なのはわかりました。
では構成銘柄はどうなっているのでしょうか?

構成銘柄にはGAFAが揃い踏み

構成上位10銘柄(2021年6月30日現在)
構成銘柄 業種
Apple Inc. 情報技術
Microsoft Corp 情報技術
Amazon.com Inc 一般消費財
Facebook Inc A コミュニケーションサービス
Alphabet Inc A(Google) コミュニケーションサービス
Alphabet Inc C(Google) コミュニケーションサービス
Berkshire Hathaway B 金融
Tesla, Inc 一般消費財
Nvidia Corp 情報技術
JP Morgan Chase & Co 金融

構成上位10銘柄を見ると、GAFAや超有名企業しかいません。

※Googleが2つランクインしているのは、議決権あり(A)となし(C)で株式が分かれているから。※※議決権とは株主総会での投票権のこと。選挙とは異なり、株主総会では保有株数が多い人ほど発言権が強い。

『構成上位』というのがポイントで、S&P500に組み込まれる企業は時価総額により重みづけされています。
時価総額が高い企業をより多く組み込む仕組みです。

浮動株調整後時価総額加重で重みづけする

S&P500に組み込まれる割合は、浮動株調整後時価総額に比例します。

※浮動株とは発行済み株式のうち、会社の創業者や経営陣などが保有し、取引できない大量の株式を除外したもの。

単純に時価総額を比べるのではなく、浮動株の割合を加味して調整した尺度です。
時価総額が高く浮動株が多いほど、より大きな割合で指数に組み込まれます。

S&P500では単純に時価総額が高いだけでなく、市場で十分な流動性をもった銘柄が高く評価されるんですね。

指数設定当初からの値動きと利回り

S&P500の1941年からのチャート
2021年7月8日現在4358ポイントに。引用元:TradingView

1923年に前身となる株式インデックスが開発され、1957年に現在の500銘柄からなる形式になったS&P500。

なのになぜ1941年からのチャートなの?
と疑問を抱いたあなたは鋭い。

S&P500の単位はドルではなくポイントです。
1941年から1943年の平均を10ポイントとして計算します。

1941年と比べると指数の規模が400倍以上に!

指数の基準を定めた1941年からの80年間、通してみると右肩上がりに成長し続けています。
複利計算すると、年利7.9%で成長していることに。

投資経験者であれば利回り7.9%のスゴさが伝わるのではないでしょうか。


とはいえ過去や現在の利率は、将来の利率とは全く関係ありません。
チャートから将来の予測ができれば、いまごろ世界中のチャーティストは億万長者です。

※チャーティストとは、株価推移のグラフから法則性を見つけて、将来の株価を予想しようとする人たち。

過去の利率より重要なもの。
それはなぜ今まで成長し続けてきたのか、その理由です。

これまで成長してきた要因がこれからも続くなら、暴落に巻き込まれても、また株価が上がると信じられる。
結果として、ろうばい売りしなくて済みますよね。

ここから先は、今まで成長し続けてきた理由を紐解いていきましょう。

S&P500指数への採用基準の詳細を解説

S&P500指数への採用基準の詳細を解説

指数への追加基準
  • 米国企業
  • 時価総額が131億ドル以上
  • 浮動株比率が50%以上
  • 4四半期連続して黒字決算
  • ユニバース全体のセクター構成と等しい

インデックスファンドの旗印として高く評価されるS&P500。
インデックスとして採用されつつ、その実態はかなりアクティブな運用をしています。

直近で2020年12月21日と2021年3月22日にも銘柄の入れ替えがありました。
こうやって常に新陳代謝を繰り返すことが、成長要因の一つです。

新陳代謝、具体的にどんな基準で行われているのでしょうか?
ということで採用基準を詳しく見ていきましょう。

米国企業

読んで字の通りアメリカ企業のみが対象となります。
アメリカか、アメリカ以外か。

時価総額が131億ドル以上

追加基準となる時価総額の推移
有効日(取引終了後) 時価総額
2021年6月3日 最低131億ドル
2021年3月17日 最低118億ドル
2020年12月8日 最低98億ドル
2019年2月20日 最低82億ドル
2017年3月10日 最低61億ドル
2014年7月16日 最低53億ドル
2013年6月19日 最低46億ドル
2011年2月16日 最低40億ドル

2010年以降の追加基準となる時価総額の推移を表にまとめました。

市場状況を反映するために四半期ごとに基準の見直しがあります。
直近の基準は131億ドル、円にすると約1兆4410億円!

2020年の年末までは98億ドル、日本円で約1兆780億円でした。
以下の要因を織り込んで、市場規模が急拡大しているのがうかがえます。

  • コロナによる金融緩和
  • ワクチン普及による経済正常化への期待

新しい銘柄を採用するのは、市場規模に見合った時価総額のものだけ。

キチンと基準を見直し続けるからこそ、いつの時代も大型株の動向を表す指標であり続けられるんですね。

浮動株比率が50%以上

浮動株比率が50%以上あり、株式の過半数を市場で取引できること。

議決権目的で51%以上の株式を創業者が保有するような、保守的な企業はお好みじゃない、ということですね。

※浮動株とは発行済み株式のうち、会社の創業者や経営陣などが保有し取引できない大量の株式を除外したもの。※※議決権とは株主総会での投票権のこと。選挙とは異なり、株主総会では保有株数が多い人ほど発言権が強い。

先ほどの項目で時価総額が131億ドル以上と書きました。
より正確にいうと浮動株調整前時価総額が131億ドル以上ということです。

広く門戸を開いた企業だけが選ばれる。
個人的にアメリカっぽいなぁと思っているポイントです。

4四半期連続して黒字決算

直近4つの四半期、つまり直近1年間連続して黒字決算であること。

黒字決算の内容にも条件があり、非継続事業と特別項目を除いたGAAPベースの純利益となっています。
簡単にいうと本業だけで黒字であることが条件です。

※GAAPとは米国会計基準のこと。会計基準に沿った決算書が黒字の必要がある。

車屋はビットコインで遊んでないで、車作って売りなさいということですね。

ユニバース全体のセクター構成と等しい

ユニバース全体のセクター構成と等しい、なんのこっちゃですね。
S&P500とアメリカ企業全体のセクター構成が等しい、という意味なんです。

なぜこんな意味になるのか簡潔に説明すると・・・。

S&P500はS&Pトータル・マーケット指数をユニバースとしています。
※ここでいうユニバースは、母集団くらいの意味。

S&Pトータル・マーケット指数はアメリカ企業全体を含む指数です。
つまり、S&P500はアメリカ企業全体とセクター構成が等しいという意味になります。


S&P500指数への採用基準。
規模が大きく、流動性が高く、健全な財務状況の企業が採用されることがわかりました。

ですがS&P500は名前の通り、500の企業を組み込んだ指数。

※企業数は500ですが銘柄数は505です。Googleのように株式が分かれた企業がほかに4つあります。

  • Discovery
  • Fox Corporation
  • News Corp
  • Under Armour

採用される銘柄があれば、除外される銘柄もあります。

むしろ指数の成長を保つためには、収益が鈍化した企業を除外するほうが重要かもしれません。

次は銘柄を指数から除外する基準を見ていきます。

業績が振るわなければS&P500から除外される

業績が振るわなければS&P500から除外される

構成銘柄の変更
変更内容 企業名 実施日
追加 Tesla 2020年12月21日
除外 Apartment Investment & Mgt 2020年12月21日
追加 NXP Semiconductors 2021年3月22日
追加 Penn National Gaming 2021年3月22日
追加 Generac Holdings 2021年3月22日
追加 Caesars Entertainment 2021年3月22日
除外 Flowserve 2021年3月22日
除外 SL Green Realty 2021年3月22日
除外 Xerox Holdings 2021年3月22日
除外 Vontier 2021年3月22日

2020年12月と2021年3月にあった構成銘柄変更の一覧です。

企業の合併・買収などのタイミングに合わせて適宜銘柄の入れ替えが実施されます。

除外基準はというと・・・。

指数からの除外基準
  • 指数への追加基準の一項目以上を著しく逸脱した銘柄
  • 合併、買収、大規模なリストラを実施したために追加基準を満たさなくなった銘柄

指数への追加基準の一項目以上を著しく逸脱した銘柄

追加基準を下回ったらすぐに除外される、というわけではありません。
ですが直近で除外された5銘柄の時価総額、S&P500の中では小粒なのも事実。

  • Apartment Investment & Mgt
    10.4億ドル
  • Flowserve
    53.55億ドル
  • SL Green Realty
    53.47億ドル
  • Xerox Holdings
    45.72億ドル
  • Vontier
    53.83億ドル

詳細な基準は明かされていませんが、公表されたポイントが評価されているのは間違いありません。

  • 時価総額
  • 株式の流動性
  • 財務の健全性

銘柄の追加や除外の最終決定は、指数委員会が下しています。
利益を出し続けているかどうかが重要なファクターなのは間違いないでしょう。

合併・買収・大規模なリストラを実施したために追加基準を満たさなくなった銘柄

合併・買収・大規模なリストラ・・・。
つまりは市場の流れを汲んだ銘柄の組み換えがある、ということ。

大規模なリストラはわかりやすいですね。

経営資源を再編するような状況であれば、時価総額や財務の健全性は悪化していることが多いです。

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公表されていない基準も含めて選考が行われ、常に利益を出し続ける500の企業で構成される指数、それがS&P500です。

わたしも成長にあやかりたい・・・、なんて思うのも無理はありません。
S&P500への投資とは、S&P500に連動する投資信託かETFに投資するということ。

投資信託やETFの選び方のワンポイントも併せて紹介します。

S&P500に投資できる投資信託とETF

S&P500に投資できる投資信託とETF

S&P500に連動する投資信託とETFを紹介します。

投資信託やETFの選び方も簡単に説明するので、気になる方はご覧ください。

注意事項

特定銘柄を推奨しているわけではありません。
最終的な投資判断は、
あらゆる情報を考慮し、自己の責任でお願いします。

S&P500に投資できる投資信託と選び方のポイント

MORNINGSTARの個別銘柄のページにリンクしています。
販売手数料 信託報酬 隠れコスト 純資産残高 償還日
eMAXIS Slim米国株式(S&P500) 0% 0.10% 0.06% 5,260億円 設定なし
SBI・V・S&P500
インデックス・ファンド
0% 0.06% 不明 2834億円 設定なし

S&P500連動の投資信託で、わたしが良心的だと思うのはこの2本。

SBI・V・S&P500は2021年6月末に新設されました。
まだ決算期を迎えていないので、隠れコストはわかりません。

それでは投資信託の選び方のポイントを簡単に説明しますね。

  • 販売手数料
    安いほうがよい
  • 信託報酬
    安いほうがよい
  • 隠れコスト
    安いほうがよい
  • 純資産残高
    30億円以上が目安
  • 償還日
    設定されていないこと

前半3つのコスト系は安ければ安いほどよいです。
信託報酬は話題に上がることも多いですが、ぜひ隠れコストも確認してください。
MORNINGSTARで銘柄を検索し、コストタブに記載がある数値で計算できます。

隠れコスト=信託報酬率-実際の経費率

純資産残高の一応の目安は30億円。
あまりに残高が低いと償還のリスクがあります。

償還日とは投資信託の運用を終えて、投資家に資金を償還する日です。
償還日が設定されている投資信託は、償還日で確実に運用が終わってしまうため長期投資に向きません。

S&P500に投資できるETF

MORNINGSTARの個別銘柄のページにリンクしています。
販売手数料 信託報酬 純資産残高 償還日
バンガード・S&P 500 ETF(VOO) 証券会社による 0.03% 2350億ドル 設定なし

S&P500に投資できるETFといえばVOO。
バンガードが運営する超有名ETFです。

ETFの選び方のポイントも投資信託とほぼ同じです。
違う所だけかいつまんで説明します。

  • 販売手数料
    投資信託は商品ごとに販売手数料が定められていますが、ETFは証券会社ごとに売買手数料が決まっています。
  • 隠れコスト
    米国ETFに隠れコストはありません。

ひとつ気を付けたいのが、VOOはドル建てということ。
円で直接買えないので為替手続きが必要です。

成長する要因はあるけど未来は未知数

成長する要因はあるけど未来は未知数

繰り返しになりますが、過去や現在の利率は、将来の利率とは全く関係ありません。

以下のような理由で投資対象を選ぶのはオススメしません。

  • いまチャートが右肩上がりだから
  • みんなオススメというから

これまで見てきた通り、S&P500には新陳代謝の仕組みが備わっています。
この仕組みは少なからず成長に寄与します。

ですが成長し続けるのと世界1位を維持するのは別の話。

アメリカがこの先ずっと世界経済をリードするとは限りません。
10年前、スマホがここまで普及することを予想できなかったように、10年後の世界がどうなっているかは誰にもわかりません。

だからこそ雰囲気に流されるのではなく、中身を理解する。
自分の頭で考えて結論を出す、というのが投資の世界において最も重要なことです。

参考サイト

記事執筆にあたり、参考にさせていただいたサイトの一覧。